年収の壁(社会保険の壁と所得税の壁) わかりやすい解説
医療・介護・障害福祉専門の社労士による情報発信
社会保険(健康保険・厚生年金)年収の壁とは
・手取りが減ってしまうから、健康保険料と厚生年金保険料を支払いたくない。
・夫が扶養手当を受給しているから、健康保険と厚生年金の被保険者になれない。
という理由で就業に制限をかけている働き方の壁。
具体的には
① 50人以下の事業所で働く時 130万の壁
・週の所定労働時間及び1ヶ月の所定労働日数が常用労働者の4分の3未満で働く
(例)@1,078円(埼玉県最低賃金)✕23時間以下✕52週=年収128.9万円
② 51人以上の事業所で働く時106万の壁
・週20時間未満 且つ 月88,000円未満で働く
(例)@1,078円✕19時間✕52週=106万円
③ 自営業では130万の壁
・収入−必要経費=合計所得金額が130万未満
このような働き方を選択している方でも
・事業所としては、もっと働いて欲しい。
・ご本人も、縛りがなければもっと働きたいというジレンマ(壁)に対して、
働き方改革(年収の壁の突破)を支援する制度や助成金が、政府・自治体から発信されています。
【キャリアアップ助成金 社会保険適用時処遇改善コース】
令和8年3月31日まで
上記 ① と ② で、これから新たに標準報酬月額88,000円〜104,000円までの資格を取得する場合に、労働者負担の社会保険料が助成金支給されます。
壁を超えて働いても労働者負担の健康保険料と厚生年金保険料を事業主が負担してくれるので、労働者の手取りは減りません。2年目は労働時間を延長して収入アップを図ります。
社会保険適用時の手取り減少をなくし、事業所の労働力を強化し、労働者の収入増加と福利厚生充実を図る制度です。
1年目:20万円、2年目30万円 合計50万円助成金

【キャリアアップ助成金 短時間労働者労働時間延長支援コース】
令和7年7月〜新設
現行の社会保険適用時処遇改善コースの対象とならない、上記 ① と ② で、新たに20時間以上や、4分の3以上の労働時間で被保険者資格を取得する労働者向けに新コースができます。
1年目:40万円、2年目:20万円 合計60万円
社会保険 年収の壁(106万と130万)の撤廃
現在は51人以上と50人以下では社会保険の適用条件が異なりますが、この企業規模要件は
10年かけて縮小・廃止され、2035年には10人以下の事業所でも20時間以上働けば社会保険加入となる制度に統一されます。

社会保険が適用される事業所の拡大
現在は個人経営の労働者5人未満や、個人経営なら従業員が何人いても社会保険の適用とならない業種もあるのですが、2035年10月には、個人経営で5人以上の労働者を使用する事業所は全て社会保険適用となり、給与額×15%の福利厚生費が発生します。 「 週に20時間 」が、キーワード。

所得税 年収の壁とは
令和6年(昨年まで)の
・給与所得者の所得税の壁は103万円(基礎控除48万円+給与所得控除55万円)
・自営業者の所得税の壁は48万円
でしたが、
令和7年(今年)の所得税の壁は
・給与所得者は160万円(基礎控除95万円+給与所得控除65万円)
・自営業者は95万円
従業員の皆さんについては、160万円まで働いても所得税は0円です。
2−2.今年の年末調整にむけて
新制度施行は12月1日ですので、11月までは従来通りの所得税を運用し、12月の
年末調整で新制度を適用します。トピックスとしては、
【配偶者控除・扶養親族控除の収入要件の緩和】
・配偶者、扶養親族の収入要件が、103万円から123万円に緩和されました。
所得税の壁(所得税がかからない)は160万円
所得税の扶養認定のための収入上限は123万円
【特定親族特別控除の新設】
・19歳以上23歳未満のお子さんを有する職員さんには源泉徴収票等を提出いただき、
123万超 150万以下なら 63万円の控除が適用されます。
今月のメルマガは、
・年収の壁
・壁を突破するための助成金
・社会保険料徴収の今後の流れ
・今年の所得税改正 についてご案内しました。
壁が多すぎて、どの壁か、わからなくなりますよね。
労働力人口の減少が避けられない日本で、優秀な従業員を雇用し、働き方改革によって雇用環境を整備し、事業主様の事業発展に寄与します。
社会保険労務士 西澤
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